NEWS NO.50(2021年度)

大学院生の藤江衣織さんが「令和3年度北海道体育学会70周年兼第60回記念学会大会」で若手研究者賞を受賞

12月4日、5日に、ホテルライフォート札幌での対面とオンラインとのハイブリッド方式で開催された「令和3年度北海道体育学会70周年兼第60回記念学会大会」において、大学院酪農学研究科食品栄養科学修士課程２年（健康栄養学）の藤江衣織さんが発表した「持久性運動の5分前の糖質溶液摂取は運動誘発性低血糖を引き起こさない」が若手研究者賞を受賞しました。

＜受賞演題＞「持久性運動の5分前の糖質溶液摂取は運動誘発性低血糖を引き起こさない」

藤江衣織さん、垣内ちひろさん、嶋森昂太さん、柴田啓介講師、山口太一教授、東郷将成さん、瀧澤一騎さん

＜研究概要＞

糖質は持久性運動時のエネルギー源のひとつであることから、持久性運動前に糖質を摂取することが推奨されています。しかしながら、私たちの研究室で以前に行った八田早那子ら（2021）の研究では、持久性運動の開始30分前にスポーツドリンクと同等量の30gの糖質を含む溶液を摂取し、運動を開始すると、運動中に低血糖の基準値を下回る運動誘発性低血糖が生じることが明らかとなりました。運動誘発性低血糖が生じると集中力や運動パフォーマンスの低下が生じる恐れがあると言われています。また、他の研究において、持久性運動の開始15分前の糖質溶液摂取でも運動誘発性低血糖が生じることが示されていました。しかしながら、糖質摂取と運動開始との間が15分よりも短い運動開始の直前の糖質溶液摂取が運動誘発性低血糖に及ぼす影響は明らかとなっていませんでした。そこで本研究では運動開始直前（5分前）に糖質溶液を摂取し、運動を開始した場合に運動誘発性低血糖が生じるか否かを検討しました。本研究の結果から、運動開始直前（5分前）にスポーツドリンクと同等量の30gの糖質を含む溶液を摂取し、運動を開始しても運動誘発性低血糖が生じないことが明らかとなりました。

藤江　衣織さんのコメント

（北海道大谷室蘭高校出身）

若手研究者賞をいただき、大変嬉しく思います。本研究を進めるにあたり、ご指導いただいた山口太一先生をはじめ、共同研究者の先生方、協力してくださった後輩の皆さんのおかげで賞をいただくことができました。皆様に心より感謝申し上げます。
本研究を終えて、さらに検討すべき課題を発見することができました。今後も研究を続けるとともに、今回の経験を糧にし、スポーツの現場に還元できるような研究を引き続き継続してまいります。

指導教員：山口　太一教授（写真2列目右）からのコメント

この度、藤江さんが若手研究者賞を受賞した研究は、藤江さんの修士論文に関わる研究の一部です。藤江さんは研究の計画段階において、多くの先行研究を精読し、これまで何が明らかになっていないのかを理解し、明確な課題設定をするとともに、どのような研究を行えばスポーツの現場に活かせるかをよく考えました。また、実験は朝食摂取後の午前中の決められた時間に行っていたために1日に1名の被験者の実験しか実施できませんでした。緊急事態宣言明けの6月より実験を開始し、10月までの長い期間にわたり、集中力を切らさず、最後まで完遂しました。もちろん、研究室の他の学生や研究に興味を持ってくれた管理栄養士コースの1、2年生が験者として協力してくれたことも実験を最後までやり遂げられた要因です。研究の結果は、藤江さんの立てていた仮説通りとなり、研究結果としても、そして、スポーツの現場に還元する上でも非常に有益なものとなりました。北海道体育学会の若手研究者賞は、学会の抄録、発表ならびに質疑応答の総合評価により選定されますが、上記のようなこれまでのすべての過程が素晴らしかったからこそ、評価されたものと考えます。北海道の体育・スポーツに関する若手の研究者としてもっとも評価されたわけですから、自信を持って今後の研究活動に邁進してもらいたいです。